生い茂る木々の葉:杉崎賢次郎

環境保全エンジニア・杉崎賢次郎の拙言。古来、生物は数億年単位の長い年月をかけ、自然の中で徐々に進化を遂げてきました。しかし、人間の手によって人為的にもたらされた近年の急激な変化は、生態系に大きな影響を与えています。

世界遺産と体験授業~杉崎賢次郎

大人はよく、最近の子供はゲームばかりやって、と言います、屋久島や白神山地に連れてきた子供たちにゲームを貸しても、きっと誰もやらないでしょう。木があれば登るし、きれいな海があれば泳ぎます。自然を子供から奪ったのは大人なのにゲームなんかやるなと言っています。

白神でサンショウウオやムカシトンボのヤゴをとった子は、きっと一生忘れません。まさに実体験です。すばらしい自然に直接触れ、におい、雰囲気を感じます。このプロジェクトは、そんな体験の手伝いをしています。

■一生忘れない自然体験

災害が多い日本で暮らすには自然とうまくつきあう必要があります。危険から子供を遠ざけるのではなく、どう対処するかを教えなくてはなりません。まず自然を好きになってもらいたいです。そうすれば自然を壊したり、汚したりする気には絶対なりません。

世界遺産屋久島、白神、知床、小笠原。これくらいの自然を残せなくてどうすると思います。昔から受け継いできた自然を、よりよい形で引き継ぐのが私たちの役目です。体験授業に参加した子供たちが大人になり、スタッフになり、次の世代の子供たちに伝えていくようになればいいと思います。

■ハナハク

「花と緑の万博」(略称:ハナハク/花博)にしても「花」が先になっていますが、私は緑あっての花だと思います。花は形も色彩も豊かなのでそちらの方に目がいってしまいますが、緑も同じウエートで見て欲しいですね。

感性は、きれいな景色を見てハッとする気持ちが積み重なってはぐくまれるものだと思いますが、最近は削られている山が多く、自然がうせていくに従って、そういう心すら消えてしまうような気がしてなりません。

木々が肩ふれあう感じでひしめき合っているような森の自然を保つためには、人間が手を差しのべなければいけないと思います。人間は緑と共生するという気持ちを持ち続ける必要があります。

■日本は南北に長い

日本は南北に長いので、北海道は針葉樹と広葉樹のまじったエゾマツ、トドマツ、ミズナラ、センノキ、東北地方はブナ、ミズナラ、関東以南ではシイ、カシの照葉樹林というように樹木がバラエティーに富んでいます。

北では知床の問題、東北のブナ帯の問題、沖縄のヤンバルのシイ、カシの伐採問題などが関心をひいていますが、そうした地域には、例えば知床にはシマフクロウ、オキノワシ、クマゲラといった独特の生物が生息していますが、それらは絶対に手をつけないで残したいというのが私の考えです。

森林だけではなく、日本には火入れや放牧、刈り取りといったプレッシャーが加わってできる独特な草原景観があります。阿蘇くじゅう国立公園、美ヶ原国定公園などですが、これは人間とのかかわりによってできた独特な植生タイプです。そこが今、ゴルフ場、カーレースなどの場所として狙われており、非常に残念だと思っています。

 

杉崎賢次郎